大丈夫、向き合いなさい。~父、緊急入院~ [おもいの輪郭]
先週の金曜日、父が大学病院に緊急入院した。
脳腫瘍。
ボクは岡山旅行から、急遽昨晩帰郷した。
数週間前から、手の動きがおかしかったり、
車の運転でも、左側が見えづらいらしく、歩道寄りに運転して危なかったり、
あんなに頭の回転が速い人なのに、
考えていることと動きが一致しなかったりといった症状は見かけてはいたのだが、
先週くらいから、汲んだお酒をおもいっきりこぼしたり、
雑用をするときにモノが持ちづらそうだったり、
ボクが旅行に出かける水曜日には、
今までにありえないくらい、歩き方もおぼつかなくなってしまった。
最近足の痺れ、痛さが気になり、薬をもらって飲み始めた頃とかぶっていたから、
薬が強すぎるのかな、としか思っていなかったのだけれど・・・。
実は、夏に肺がんで手術した際に見つかった、
反対側の肺の影が、定期検査で大きくなっているのが見つかったことから、
早々に手術することが決まっていて、
その準備を徐々に始めていた。
それでもまだ、そんなにすぐ入院、ってことにはならないかと思い、
父親も「気にしないで楽しんでこい」と快く送り出してくれた。
旅行の1日目の夜、母親から電話があって、
手術が急に決まったけれど、元々するのは決まっていたことだからと、
こっちは大丈夫だから、旅行を続けていいと言われたのだが。
その2日後、母親からの不在着信に折り返して電話した際に、
脳梗塞で緊急入院と知らされた。
なんでも、前日の夜、夜の買い物でウチの車庫に入れる際、
ウチの目の前の用水路に脱輪してしまったそうだ。
あれだけ自信家の父親が、相当落ち込んでしまったようで、
「もう運転はしない」、「酒も止める」、と母親に漏らしたようで・・・。
その翌朝すぐに、かかりつけの個人病院に行って紹介状を書いてもらい、
そのまま入院、ということだったようだ。
突然のことだったので、これまでの自分なら、相当動揺してしまうはずなのだけど、
何故かものすごく落ち着いて、母の話を聞いていて、
この後、周りのことを判断してどう動くべきか、
自分はどのように動揺することなく行動すべきかを、しっかりと考えることができた。
前の仕事を未だに続けていて、ストレス満杯で余裕のない状況だったら、
こんな行動は取れなかったはず。
ボクはストレス耐性に極端に弱い。だからうつにもなったのだろうし。
これくらい平気だよ、って強靭な精神の人ももちろんいるだろうけど、
ボクは、そうなんだ。
岡山旅行の拠点としてお世話になっていたお寺の、
大学時代の先輩であり無二の親友であるご住職に、すぐ相談した。
明朝からご住職のお勤めの送迎がてらの観光として、笠岡に行く予定だったのたが、
明朝すぐに帰ったほうがいい、とおっしゃった。
それでも、ボクは笠岡に行く、と言った。
そのほうが、むしろ現実に向き合う心構えができるから、と。
そして、穏やかにお話されるご住職との会話で、気付いた。
来るべき現実を冷静にしっかりと受け止められるために、
二重のストレスでパニックにならないように、仕事を辞めなさい、と言われているのかも、と。
「そうよ。人生ってそんなふうになってんねんよ。仏様がそうしてくださったんかも知れんよ。」
ご住職もそう頷いてくださった。
うん、そうだ。そうなるように、何かが導いてくれたんだ。
翌朝の本堂での住職のお勤めに、ボクは途中からご一緒してお念仏を唱えた。
昨晩ご住職との話の後に、事の始終を話した、これも大学の先輩である奥様も、
ご住職と共にお念仏を唱えていらっしゃった。
昨晩、ご住職がおっしゃった。
「何も考えず、仏様だけと向き合って、お念仏しなさい。」
ボクは、木魚を叩きながら、お念仏を唱えた。
仏様の姿としっかりと向かいながら。ヘタクソだけれど。
「大丈夫、向き合いなさい。」
仏様がそう教えてくれたように思えた。
そして、お念仏が終わった後、ご住職がこうおっしゃった。
「一昨日と違って、今日は木魚の音が安定してたよ。」
思いは、行動に素直に現れるものだ。
その後、笠岡にも行った。
昼食で笠岡ラーメンを食した後、美術館にも寄り、
展示内容が思いがけず自分の感性にピッタリ合って、ラッキーだった。
そして、お寺に戻り、ご住職、奥様、そしてかわいい三兄弟と一緒に、
みんながとても素敵な表情の写真を撮り、
奥様に簡易ながらも、茶室にて一席設けていただいた。
心がとても落ち着いた。
そして、高速道路で急いで帰宅。
帰宅後すぐに、車で病院に直行。
車の中の母はこっちが口を挟めないくらいに饒舌でハイテンション。
とにかく疲れてて、話を聞いて欲しかったんだろう。
普段はうるさがるボクでも、不思議と心は冷静。
それでも、落ち着いていると思いながらも、どこかに動揺があったのかな。
病院の行き返りの運転、慣れた道なのにやたらと道を間違えてしまった。
でも、大丈夫。
最悪の事態ももちろんあり得るけれど、
きっと、乗り越えられるはず。
ご住職もおっしゃったように、
ボクの周りには、助けてくれる人達がたくさんいるのだから。
そしてそんなボクだからこそ、父や母を支えていけるのだから。
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