「風立ちぬ」を観て [My Favorites]
ヨーロッパの映画のような、美しく儚い映画だった。
裏を返せば、一般的なアニメーション映画に対する期待を持って観る映画ではないのではと思った。
一般的に、アニメーションは実写映画と比較して、
オーバーリアクションであったり、盛り上がりや感動を、
敢えてより一層あざとく見せようとするもので、
だからこそ、アニメの実写版はなんともおかしな作りになってしまうと思うのだ。
そしてこの、実在人物をモデルにした宮崎駿氏最新作は、まさにその逆。
実写で描くのが一般的かと思えるものを、アニメーションにしたのだ。
ナウシカ、ラピュタのようなめくるめくハラハラドキドキ感はない。
魔女の宅急便のようなファンタジーさも、
同じ飛行機を題材にした紅の豚のような、洒落た中に散りばめられたコミカルさもない。
ここで笑わせるとか、お涙頂戴的な「狙い」が一切ない。
これまでのアニメーション映画には、例えようがないのである。
ただ誠実に、朴訥に、どこまでも優しく、壊れそうに美しく、静かに物語が進んでいく。
宮崎氏は、主人公のモデルの方を本当に好きだからこそ、こういった作りになったのだろう。
こなれた声優を主役級に置かないことには、どうも賛否両論あるようだが、
この作品に「狙い」があるとすれば、そこが「狙い」と言えるのかも。
公開初日に観たい、というつもりで出かけたわけでなく、
突然レイトショーで観たいと思ったのだが、
レイトショーで観てよかったと、改めて思った。
ただし、逆に言うと、真っ昼間に観るにはなかなかハードルが高い内容だ。
そして、アニメーションでありながら、子供が鑑賞するには、難解過ぎるかも知れない
(子供向けに作ったわけではないだろう、さすがにこの内容は)。
結論としては、ボクは好きな内容である。
宮崎アニメは、何度も観てその度に違うメッセージを読み取ることができるアニメであり、
今作品も、そうなのだと確信している。
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