SSブログ

ノンフィクション・ショートショート アイノカタチ。 ~ JR大阪駅(大阪府大阪市北区) [街小説]

2015-05-31 17.48.22.jpg
17時55分。
5年前にまだ工事中だった大阪駅に到着。
まさか、こんな風に変貌しているとは。

2015-05-31 17.50.18.jpg
重要ターミナルであることは、当然知ってはいるのだが、
ここまで近代的な仕上がりになるとは、思ってもみなかった。
賛否両論あったJR京都駅よりも、関西一の大都会、大阪だから
すんなり受け入れられるとは思うけれど。

2015-05-31 17.53.41.jpg
駅から出ても、この壮観さはとんでもない。
もう以前の雰囲気など、微塵も残っていない。
単なる駅前ではなく、もう新しい街ができたような様相だ。

2015-05-31 17.52.30.jpg
グランフロント。
今日、西宮でランチを共にした、元同僚の勤務地だ。
もしかしたら僕もここで働いていたのかな、なんて要らぬ想像をしたりして、
なんだか無駄に、寂しくなってしまった。


そのグランフロントが、大学の女友達2人との待ち合わせ場所である。
なにせ勝手が分からないので、パナソニックセンター1Fの入口前で待っていると、LINEした。

数分後、きみちゃんがやってきた。
本当に久しぶりだと、思わず抱き合ってお互いに喜んだ。
彼女の横には、付き合って何年にもなる、
話には聞いていたけど初めて逢う、加藤さんという20代後半の男性がいた。
なんでも直近まで、デートをしていたそうで、
このまま合流するかどうか、その場で決めようとしていたそうだ。
もちろん、ボクは一緒にどう? とお誘いする。

その彼は、穏やかで礼儀正しく、理知的な雰囲気の漂う人だった。
付き合ってから、あまりにも時が経っているので、
僕は思わず、「いつ結婚するの?」って、つい口にしてしまった。

「そろそろかなー、って話はしてるんだけどね。」

ほぅ、ようやくそんな状況になってきたのか。
よしよし。ちゃんと幸せにしてもらいなさいよ。
なんだか、やっと安心した。そんな感じ。

そしてそれから数分後、陽子ちゃんが合流した。
ちょうどさっき、髪を切ってきたらしい。
さすが女の子。きみちゃんはそれに敏感に気がついた。
しかし、男っていうのは、こういうところが鈍感でいかんのだよなぁ・・・。

二人は異なる学科の同級生。
他の先輩と同様に、文化活動部で知り合い、友達になった。
彼女等は文芸出版をやっていて、
DJをやっていた僕は、何回かそこにショートストーリーを載せてもらった。
ワープロでの編集作業やスクリーントーン貼りとか、作業もせっせと手伝ったっけ。


さて、18時を回りました。目的地に行きましょうか。
グランフロントのレストラン街はかなり上階にあるので、
長いエスカレータに乗りながら、
完璧なおのぼりさん状態で、僕はあちこちを見回していた。


イタリアンレストランでの、今回の旅行、最後の晩餐が始まった。
最初、オーダーしたものが、40~50分経っても来ないので、
「おいおい、大丈夫か、ここ?」って思ってたけど、
一旦来たら、あとは順調に運ばれ始めてきた。

それにしても、風が相変わらず強い。
背後にある観葉植物の葉っぱが、頭にパサパサ当たって、気になるのなんのって・・・。

ああ、最後のお土産サンタ。
またまた登場の生姜糖に、
島根県立美術館で偶然見つけた、ネコちゃんのパラパラマンガ。
特にネコちゃんパラパラは大好評。
ほら、女の子の心、ちゃんと掴めるでしょ・・・あれ? じゃなんで彼女できないんだ?

話も当然、昔とおんなじように、弾む弾む。
お互いの近況は当然のこと、
きみちゃんの彼氏に、三人のエピソードを面白おかしく話したり。


陽 「いつ以来だっけ、会ったのって?」

僕 「5年前くらいでしょ。陽子さんが出張で東京に来るっていうから、ランチ一緒にしたやん。」

陽 「えっと、どんなとこ行ったっけ?」

僕 「日比谷公園よ。中にあるレストランで、洋食かなんか食べたやん。」

陽 「あぁ、あの時かぁ。」

僕 「そうそう。Facebookでやりとりしてるから、会ってるような気がしてるけど、実はあれ以来よ。」


僕 「そういや、たまの再会なのに、やたら買い物付き合わせて、怒らせたなー。」

き 「そうそう、あそこに行きたい、ここもいい、って何時間も。コンニャローって、もううんざり・・・。」

僕 「あれはさすがに、悪かった。もう今はそんなことないよ。もう買い尽くしたし。
   それに最近、欲しい服、ないんよね。だって、今回は全然買い物してないもん。」

き 「マジでか!? 信じられん。すっかり変わったもんだ・・・。」

僕 「大人になったっちゅうことよ。」


僕 「ああ、そうそう、衝動買いのプラナリア(^^;」

陽 「何それ!?」

僕 「通りすがりの雑貨店に入ったら、偶然見つけたの。小物入れみたいなやつ。」

き 「そうそう。これなんなんかなーって言ってて、『プラナリア』ちゃうん、って。
   嘘ぉ~そんなんアリ? って言ってたら、タグに『プラナリア』って(^^;」

僕 「まさかよな。まさかプラナリアがあるとはねぇ・・・」

陽 「で、何入れてたの?」

僕 「通帳。結構ピッタリはまるんだな、これが。」


き 「そういや、腹が減って、やたら二人とも機嫌が悪くなったこともあったなー。」

僕 「ああ、あれ、もうひどかったな。で、結局入ったのがとんかつ屋。」

き 「食ったらいきなり機嫌が良くなったよね。」

僕 「どんだけ食い意地張ってるっちゅうねん、って感じ。」


僕等のエピソードも、とても穏やかに彼は聞いてくれた。
隣に座って、大丈夫かな、って最初は心配だったけど、
初対面なのに、なんか安心して心が開けて話せた。
これだったら、きみちゃん、大丈夫だな。改めて、そう確信。

僕の入れない話も当然出てくる。
でも、僕もそれになんとか上手く乗っかることができた気がする。
で、時々トイレに行くついでに、喫煙ルームで一服。
その時の僕は、白い煙を吐きだしながら「あぁ・・・そろそろかぁ・・・」と感傷に浸っていた。

2015-05-31 19.39.05.jpg
そして、グランフロントから見える夜景やオフィスの灯りも、
綺麗であればあるほど、
もう少しでまたお別れだな、という寂しさがよぎってしまう要因にしかなってくれなかった。

21時ちょっと過ぎに、お店を出た。
明日はみんな、お仕事だもんね。
本当に、来てくれてありがとう。
そんな気持ちを伝えるために、4人で一緒に写真撮らない、って僕から提案。
彼はちょっと遠慮したけど、せっかくなんだから、と僕が勧めた。

パシャッ。

そうだよ。2人には、ちゃんと幸せになってもらわないと、困るんだ。
そうじゃないと、幸せが僕の番に、いつまでも回ってこないし。
4人で撮った写真の中の僕は、その瞬間、確かに幸せだったよ。

男と女って、友達には絶対になれない、
絶対に恋愛感情なしでは、付き合うことなんてできないって、
何かの番組で、力説していた人がいたけれど、
ほら、ここには確かに、20年以上続いた、友情がある。

もしかして、僕のほうは、
恋愛感情なのか何なのか、理解できていないまま、
友達として付き合っていたのかも知れない。
なにしろ、適度な付き合いが元々できないから、
男性であれ、女性であれ、「大好き」って愛情をこれでもかって注いで付き合うんだ。
恋心があったのかなかったのかは、僕にもよく分からない。
僕の中には、男性もいれば、女性の心もいるから、どっちもありなんだ。
だから結論は、僕の心の中に、ずっとしまっておくつもりだ。

だから、少なくとも、僕にとっては男女の友情関係は「ある」と断言できる。
そして、こんな不器用な僕に、ずっと相手してくれて、本当にありがとう。
これからも、歳を重ねても、きっとこのまま、ずっとこのまま、いてくださいね。

3人は僕を改札まで見送ると言ってくれた。
駆け足で駅地下のお店でお土産を購入し、
切符を買って、いざ改札へ。

最後に、みんなに握手。
彼氏には「きみちゃんを絶対に、幸せにしてよ。」と固く握手した。

そして、改札をくぐり、見えなくなるまで振り返って、手を振った。
さよなら。またそのうちに。
今度は島根にも来いよ。案内喜んでやりますから。
また他愛もなく、相変わらずな感じで、笑って話そうね。


もう、キャリーバッグには、何にもなくなった。
ボストンバッグと着替えと、さっき買ったお土産だけ。
大阪駅ホームへ上るエスカレーターで感じた、キャリーバッグの軽さが、
その時の僕の、終わったという充実感と、終わってしまったという空虚感と、同期した。
見送られる人の寂しさは、見送る人の寂しさと同じで、
どちらも実は、お互いに、絶対に分かることのないことなのかも知れない。

神戸駅までの新快速は、短いようで、なんだか長かった。
楽しい時間はすぐに過ぎちゃうのに、
寂しい時間は、なんでこう、長く感じてしまうのかな。
でも、もう涙は出ないよ。絶対にもう、出さない。

5月31日日曜日 21時30分。
残り時間は、あと10時間半。
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:旅行

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。