「神様のカルテ」を読んで [My Favorites]
誰もがどこか不器用のままで、今を生きている。
2010年本屋大賞第2位の作品であり、映画化もされているので、
ご存じの方も多いだろう。
この作品の主人公、栗原一止(くりはらいちと・愛称「イチ」)は、
腕は確かな、しかし一癖ある内科医。
その癖は多分、自分自身に正直に生きるために、
社会に立ち向かっていくためにどうしても必要な楯なのだろうと思う。
その楯を下ろす唯一の存在が、妻でありカメラマンである栗原榛名(はるな・愛称「ハル」)。
あまりにも純粋無垢であるため、
どんなに素知らぬ振りをしても、イチはハルにすべてを見透かされてしまう。
そして、そんなハルにだからこそ、イチは心のすべてを、安心して許せるのだ。
一止は常に冷静に、そして誠実に実直に、医者としての任務を全うする。
しかし末期の患者に対しては、どうしても自分の感情が漏れ聞こえてしまう。
彼は、悲しむのが苦手なのだ。
彼は一つの人生の岐路に立つことになる。
一方の道は、医師としての将来を約束されている道。
そしてもう一つは、休むことさえ許されない、
過酷ではあるが彼の理想とする、そして患者の理想である道。
二つに一つ。
その決断は、笑顔の素敵な、しかし命の時間が迫っている老婦人との出会いを通して、
彼自身が下すことになる・・・。
自らも医師である作者はきっと、
性善説を信じている、信じるべきであるという信念があるのであろう。
この作品の中には、悪人は一人も出てこない。
一止のように、ボクも本当は、世の中は全て、そうであって欲しいと願っている。
そんな人間だからだろうか、ふとしたことで時に悲しみ、時に傷ついてしまう。
ボクはせめて、どのような形でもいい、
一止のように、世の中のために、自らを捧げることができるようになりたい。
相手が大勢でも、たとえたった一人でも。
今は、それが何であるのか、その役割は何なのか、
とにかく探して、探し続けている途中だ。
一止のようにはもう若くはないけれど、まだ間に合うはず、そう信じている。
悪人なおもて往生す
親鸞のこの言葉は何か
今も命題です
by SILENT (2015-06-13 20:20)
「SILENT」さん、おはようございます。
たとえ現世が悪人でも、来世を願っていれば成仏できる。
広い心の親鸞上人のお言葉、滲みます。
人間には「悪」が、必ず潜んでいます。
そして、それといつも戦っています。
現世を後悔しても、残りの人生を幸せに生きるように試みる。
それやってきっと、ボクたちは最期に、
「いい人生だったな」と振り返ることができると思いますし、
そうなれば、いいなと信じています。
by はらぼー (2015-06-14 07:36)