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「火花」を読んで [My Favorites]

2015-06-24 10.32.55.jpg
一気に読み終わった。
純粋に、爽快な気分になった。

二人の芸人を軸に、物語は進む。
どちらも自分に正直な人間だが、
主人公は現実を直視し、自分自身の価値について悩み続ける人間であるのに対し、
主人公が憧れる先輩芸人は、現実に抗い、自分自身を貫き通す。
作者が芸人であるためかも知れないが、
内容は、ノンフィクションに限りなく近いフィクションである。

このタイトルが、
軸となるこの二人の間の関係性を指しているとも言えるし、
主人公や先輩芸人と、相対する人間との、
それぞれの一対一の関係性を示しているとも思える。
そして、キーとなる「打ち上げ花火」そのものなのかも知れない。
それら全てに当てはまるのかどうかは、読む人それぞれで感じるほうがよいと思う。

夢を追うこと。現実を生きること。
そのために何をすべきか。何が正しいのか間違っているのか。
そういった人生の永遠の課題を、
説教じみた押しつけ的ではない言語で、読者自身に自然と考えさせてくれる内容だ。

それにしても、
芥川賞候補となったというイメージで、
「もしかしてとても難解な表現で書かれているのかも」と、恐る恐る買ってみたのだが、
完全な杞憂に終わった。
ごくたまに難しい単語は確かに出てくるが、
文字面で大体の意味は想像できるものであり、とても読みやすい。

ドラマティックな出来事が続々と出てくるものの、
あくまでもそこは淡々と、感情の起伏の激しさを抑えた表現で書かれている。
一方で背景描写や人物描写は、読む者の頭に浮かびやすい、
くどすぎずもなく、明確な表現で書かれている。

ボクのように、小説を殆ど読まないような人間にとっても、
共感できたり理解できたりしやすい内容であり、
一方で読書家の方々にとっても、
行間に垣間見える隠された表現の絶妙さで、飽きさせない内容になっている。

作者の心の純粋さと人への心遣いが非常に伝わる、
素直で優しい言葉選びがとても心地よい。
作品の最後は、読み手の取り方によってはバッドエンドに映るかも知れないが、
どんな状況に今あったとしても、あくまでも生きている以上は、
決してまだエンディングを迎えてはないことを、柔らかくも強い意志で伝えてくれる。

これを機に、芥川賞や直木賞(またその候補)の作品も、
読んでみたくなった。
読書家を増やす大きな一石を投じた作品であるのは、間違いないであろう。
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