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コンタクト越しの世界と、シナモンロール。 [おもいの輪郭]

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今日、10ヶ月半振りに、コンタクトレンズをつけた。
沈んでいたその頃とは、違う風景が、広がったように見えた。

ここはスターバックス出雲大社店。
昼の2時頃に訪れたら、結構な行列になっていた
(写真は店を出た午後4時過ぎ)。

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ほら、お店の2階から、出雲大社・勢溜(せいだまり)の鳥居が見えてます。

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マイボトルに入れてもらった、グランデサイズのソイラテと、シナモンロール。

そう、シナモンロールを初めて食べたのが、
1995年の10月、寒さと縁遠いロサンゼルスのスターバックスだった。

初めてここで話すのですが、
ボクは大学時代、1年大学を休学し、
工場でアルバイトをしてお金を稼いで、
3ヶ月だけロサンゼルスに遊学したことがあるのです。

「自分探し」と言えば聞こえはいいけれど、
ただ、大学生活から、逃げたかっただけ。

2年生の時に文化部の委員長となり、
感情的に怒ることも多かったことから、
ボクの周りから、さーっと波が引くように、人が離れていった。

一方で、掛け持ちをしていた男子硬式テニス部では、
次年度の部長候補は、ボクが適任だという噂が、公然と広まっていた。
ただ足の強さと粘り強さだけがとりえで、テニス自体の実力は全くないのに、
ただ真面目だというだけで、
運動神経が良くてボクより実力が格段に上の後輩や、
わがまま放題の同期を仕切れというのだ。
こんな自分に、どうやってこいつらをまとめろと言うんだ。
テニスの下手な部長に、誰がついてきてくれると言うんだ。

二つのことさえ同時にこなせない不器用なボクには、
逃げるより他に、手立てがなかった。

一人にして、欲しかった。

ロサンゼルスでお世話になった、旅行会社の日本人社員さんに、
訪米間もなく連れて行ってもらったのが、
当時まだ日本に上陸していなかった、スターバックスだった。

当時から、お店のスタイルは、あのままだった。
購入したドリンクに、自分でココアパウダーや蜂蜜などを入れるスタイルも、当時からだった。
飲んだことのない、美味しい飲み物だった。何を飲んだかは、忘れてしまったけれど。

ただ、今でも鮮明に覚えているのは、シナモンロール。
やたらと甘くてグレーズだらけでベトベトで、シナモンもこれでもかとまぶされていて、
いかにもアメリカ人が好みそうなそのお菓子は、
何かを見つけようと必死だったボクにとって、
その何かが見つかるかも知れないという光を見せてくれた、アメリカの味だった。

そう、コンタクトレンズを初めてつけた時も、目の前に明るい世界が一気に広がった時だった。
分厚いメガネ越しで世の中を見ていた18歳の、コンプレックスだらけの浪人生のボクは、
この時初めて、本当に心が解放された、前向きになれた気がした。
コンタクトレンズはこの日から、ボクのボクらしい人生への切符になった。

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「Little Tern(リトル ターン)」。
2001年に日本語版の初版が発行された、
アメリカ人作家、ブルック・ニューマン氏の小説。
リサ・ダークス氏の挿絵のおかげで、絵本を読んでいるかのように読める小説だ。
本嫌いのボクが何故か、当時何かに惹かれて買って読んだ本を、
ほんの2~3日前に、他の探し物をしている最中、偶然に見つけた。
第2版だから、2002年。
ちょうど専門学校を卒業し、ガムシャラに働いていて、それでも楽しかったSE1年目の頃。

リトル ターン・・・アジサシという、派手さのない、どこにでもいる鳥のお話。
その鳥が、突然飛べなくなってしまったお話だ。
人間に例えると、「挫折者」「引きこもり」「うつ」のお話になるのだろうと、
日本語訳を務められた五木寛之氏は、あとがきで述べておられる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

飛べなくなったぼくは、なぜ飛べなくなったのだろう。
それを知るために、とにかくぼくは歩き回り、ありとあらゆるものを集め、
様々な自分とは違うものと出会った。
そしてそれが何かを教えてもらい、
いや、知らぬ間に自分でそれが何かに気付き、ぼくは再び、羽を広げて大空に旅立った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「本当の友情は、非常にゆっくりと育って花開くものなのだ。」

「きみは飛ぶ能力を失ったんじゃない。ただどこかに置き忘れただけだ。」

「ぼくは影のことを考えた。飛んでいる鳥のそばに影がないことを考えた。
着地した時にだけ、鳥は自分の長く伸びた黒い存在を思い起こすことができる。
影は、そこにはなくても存在するものを思い起こさせるのだ。
その時までぼくは、自分の影の存在に気づかず、
その意味ではすべてのものたちの影の存在に気づいていなかった。
鳥は、その羽や翼がどれほど価値があり素晴らしいかを知らなければ、
本当に飛ぶことはできないのだ。
高い空を飛ぶために、鳥は翼の下にあるすべての本質を見る必要がある。
そうでないと、惑星の上をただ無目的に飛んでいるだけにすぎない。」

自分の生きている価値は、いつもすぐそばにあるのに、時々見えなくなってしまう。

大学受験に失敗し浪人生となった18歳のボク。
大学生活に疲れ切った、21歳のボク。
仕事の行き詰まりで不眠症になり、自ら過ちを犯して東京を離れることになった、36歳のボク。
仕事と家族との狭間で苦しみ、うつ病になった、37歳からついちょっと前までの、ボク。

そう。ボクはボクの価値を、その時は、認めてあげることができなかった。
周りに必要とされているボクの理想像が保てなくなった時に、
ボクは、ボクがダメになった、と思い込んでいたんだ。
周りにとって、ボクはどういった価値があるか、それが自分にとっての理想だと思っていた。

でもそれは違った。
周りの思う理想を生きていても、それは自分自身の理想ではない。
自分が納得する人生を生きるのが、理想なはずだ。

今はようやく、そう思えるようになってきた。
だから、就職に向けて、再生に向けて、前進し始めている自分が、ここにいるんだ。
周りの雑音に惑わされず、自分自身が自分を認めてあげることが、
人間が人間らしく生きるためには、必要なんだ。

他のお客さんもいるのに、思わず目が潤んだ。
なんかしゃくりあげているボクがいた。

かつてこの本を読んだボクよりも、
今のボクは確実に、この本の意味が分かる人間になったようだ。
本当の意味が分かるまで、あまりに時間がかかってしまったけれど。

でも、遅くはないはず。
気付いた時から、スタートすればいいはずだ。

田舎から出てきた18歳の浪人生は、
ラジオと先に進学した同級生だけを友達に、広島の寮と予備校とを往復し、
クリスマス・イブの日にめまいと嘔吐に襲われ、
翌日から原因不明の耳鳴りに悩まされながらも、必死に食らいついて、勉強に明け暮れた。
そして、センター試験結果で奇跡が起こり、念願の志望校に入ることができた。

勉強と部活との両立、
そして兼部していた部活での自分の立ち位置に迷い、
逃げるように日本を出て行った21歳の大学生は、
ロサンゼルスで必死に生きているメキシカンの青年達に目を覚まされて、
残りの2年間を、周りに振り回されることなく、
たとえ何かを失ったとしても、自分の納得がいくことだけを選ぶことにし、
大学で得られる全てを学びきろうと、必死に授業に取り組み、無事卒業した。

41歳になったボクは、ようやく自分の生きるべき方向性を見つけようとしている。
そこがボクを、受け入れてくれることが、まずはスタートなのだけれど、
そのスタートラインに立つために、今は今の自分にできる限りのことを始めている。
きっと数か月後に、そこにはボクが立っているはずだと信じて・・・。

20年振りに、地元出雲で味わったシナモンロールは、
日本人向けに優しい甘さになっていて、
あの頃よりもずっと、美味しかった。


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最近は平日でも、出雲大社は観光客が割と多い。
今日のような陽気の日は特に、こういったライダー達が出雲を訪れている。
ボク、こういったスポーツバイクに、カッコいい出で立ちのライダースタイル、大好きなんです。
ホントはビッグバイクに乗りたいけれど、
今は車の維持費だけで手いっぱいだから、見て憧れるだけにしておきます。

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そしてこれ。
昨日、島根県立美術館の売店で手に入れた、しおり。

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薄い磁石がついていて、ポロッと抜け落ちることがない。
ミッフィーちゃんの後姿もかわいいので、愛用決定(^^)

21時48分追記。
そして、今これをアップしたその時に、
スピーカーから流れたのは、
浪人生時代を支えた、
Mariah Carey(マライア・キャリー)の「Make It Happen」だったのでした。
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SORI

はらぼーさん おはようございます。
スターバックスには深い思い出があるのですね。出雲大社のスターバックスは周りの雰囲気に合わせているのですね。
すんなりと通り過ぎて行った学生時代ですが、サイクリング部(自転車部)の思い出があります。私と同期の人と、一年先輩が、やはり休学して海外にサイクリングに行ったのを思い出しました。昨年、その同期の人と卒業以来初めて会いました。休学と留年で私と2年違いになりましたが、学生時代の海外の経験は何かを残して来れるものだと、感じていたところでした。
by SORI (2015-05-22 04:58) 

はらぼー

「SORI」さん、おはようございます。

出雲大社店、確かに外装も内装も、
大社を意識した造りになっていますが、
スターバックスらしさは、しっかりと保たれていて、
さすがだな、と思いました。

例え短期間ではあっても、
人生に何らかの光や影を、海外経験は残しているんですよね。
ボクも最近忘れていましたが、そのようです。

スターバックス、日本に上陸してからは、
関西や広島、東京にいたころも、意外とそこまで行ったことがなく、
島根初出店で大行列ができた松江店にも
「ふーん」と興味はあっても、並ぼうとまでは思いませんでしたし、
出雲大社店ができた時も、やっぱり「ふーん」でした。

でも、深層心理に、シナモンロールがあったんですよ、多分。
これも、元気になってから、
しかもつい一昨日、思い出したものでした(^^;
by はらぼー (2015-05-22 05:28) 

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